東京つばめ鍼灸院長のブログ( ´∀`)

完全無所属、無宗教、東京つばめ鍼灸院長が不定期に更新中。

新聞奨学生時代の思い出(5)

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新聞販売店はその名の通り、基本的には新聞販売による収入がメインとなっていたが、実際には新聞に挟む折込チラシの売り上げが、大きな収入源となっていたようだった。記憶は定かではないが、1枚あたり3円くらいだったと思う。

 

売店での総配達部数は5000部くらいだったが、3000部前後のチラシを販売店に持ち込むクライアントが多く、チラシの内容によって高級住宅街や新興住宅街、旧市街地などへと、分けて配達するよう指示が出ることが多かった。 

 

チラシは配達日の1週間ほど前までに販売店に持ち込まれ、我々が朝刊の配達を終えた後、朝の9時~15時頃まで、パートのオバちゃんたちが、機械でガシャガシャと音を立てながら、ブロックになった数個~40個あまりのチラシの塊を、1枚ずつにバラして組み合わせる、という作業を延々と続けるのがお決まりだった。 

 

その後、配達区域ごとに分けられたチラシを、我々が深夜1時頃に運ばれてくる出来立てホヤホヤの新聞に1部ずつ手で挟み込み、新聞配達専用モデルの屈強なプレスカブが、うめき声を上げるくらいの量の新聞を前かごと荷台に積み込み、毎日マラソン大会に参加しているような気持ちで配達に出かけるのだった。 

 

配達時に雨が降りそうだったり、すでに雨が降っていれば、ジョイナーと呼ばれる専用のラッピングマシーンで、新聞を1部ずつラッピングしなければならなかった。400部あまりの新聞をすべてラッピングするとなると、ラッピング作業だけで軽く30分以上は時間が余計に取られた。

 

さらに、ラッピングのビニールによって新聞同士の摩擦抵抗が減り、積載時に滑りやすくなるため、新聞とチラシの厚みが増せば増すほど、1度に荷台に積める新聞の量が減り、積み込み作業が増えて、配達時間が1~2時間程度遅れてしまうのが常だった。 

 

新聞のページ数が30ページ以上、挟み込むチラシが30枚以上になることが多い週末に、土砂降りの雨が降るのは最悪のケースで、通常6時前に配達が終わる区域でも、8時近くまで配達していることもままあった。それゆえ、金曜日か土曜日ばかりを狙って、休み希望を出す配達員が少なくなかった。

 

各区域ごとに順路帳と呼ばれる、購読契約者の住所と氏名が記された台帳があって、配達者は基本的にこの順路帳に記されている顧客順で配達しなければならなかった。順路帳には顧客の個人情報の他に、「5時必着(朝5時までの配達厳守、の意)」とか、「遅れ即止(配達遅れたら即解約される、の意)」など、各顧客ごとの注意事項も記されていて、常に時間を気にしながら配達しなければならなかった。

 

毎日、鍼灸学校夜間部の授業を終えて帰宅すると、いつも22時を過ぎていた。その後、2~3時間ほど仮眠して、深夜の1時すぎに起床して、新聞を配達するのが常だった。

 

まだひっそりと寝静まっているマンションを出て、長距離トラックやタクシーばかりが無味乾燥に行き交う、深夜の国道横の駐車場に停めておいたカブにまたがり、空を見上げ、間もなく雨が降りそうな雲行きに見えたり、雨が降る前特有のアスファルトの臭いがすると、とにかく気分が沈んで、恵まれぬ境遇に嫌気がさしたものだった。